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「コンビニDMZ」”戦場にコンビニ”という歪んだ設定にねじれたリアリティーがある?(2008.01.08記)

旧ブログからの引越し(その2)です。これまた、長いよ。

コンビニDMZ
「コンビニDMZ」、竿尾悟(さお・さとる)著

 もしも、戦場の、ど真中にコンビニがあったら???――このマンガは、そのワン・アイデアのみで成立した、どこまでも馬鹿馬鹿しいギャグマンガだ(言うまでもなく”馬鹿馬鹿しい”は、ギャグマンガの褒め言葉の一つ)。え?…ありえない設定だ?そう。あ・り・え・な・い・から、マンガに成る。

↓続き
 舞台は、とある紛争地帯。世界のどこかは定かでない。イメージとしては東欧近辺か、もしくは中央アジアあたり(?)だろうか。エネルギー利権かはたまた民族問題か、紛争の原因は知らないが、有象無象の武装集団がやたらにひしめく戦場がある。ここでは連邦軍と反乱軍、さらには独立派民兵も入り乱れて、ぐっちゃぐっちゃの殺し合いが日常茶飯の場所だ。敵か味方か、対立の構造さえ複雑すぎて何が何だが分からない状況の中で、とにかくヤル・ヤラレるのが常識の場所なのである。
 ふと見ると、その景色の中になぜかポツリとコンビニが建っている。シュール…。店名は”コンビニDMZ”。ここはコンピニ・チェーンDMZの、ポイント・チャーリー支店だったのだ!ちなみにDMZとは、DeMilitalized Zone=非武装地帯のこと。つまり、ここDMZ内では戦闘をしてはいけないというルールが、一応はある。

 血で血を洗う日常の中でも兵士たちは、何故かこのコンビニの中では戦わない。見えない一線を越えて店内に入ると、たとえ敵味方が鉢合わせようとも心静かにお買い物、という規則がある。もちろん、マナーを守らない輩はどこにも居るが、たとえ暴れそうな奴が入ってきても、しっかり者の店長があくまで商人の倫理に則って、強引に客を説き伏せ、時には追い出す(ここもまたギャグ)。店長に叱られた兵隊さんが一歩お店から出ると、そこで瞬時に敵の銃弾で蜂の巣にされたりして…。笑えるんだか、怖ろしいんだか。
 この、非日常と日常が溶けて歪んでくっつきあってしまったような状況が、痙攣(ケイレン)的な笑いを誘う、本作の肝だ。

 で、笑った後に、ふと考えてみた。戦争について、僕みたいな人間が一体何を理解しているだろうか?また、一体何を言えるだろう。ほとんど何も言えない。何も知らないのにハハハと笑っている自分。(知らないから笑えるんだろう、たぶん)
 戦争についてリアリティーを持てるって、どんなことなのかも分からない。メディアでは多くの戦争や紛争を見たし、見ている。多少は日本の戦争のことも、間接的には見聞した。だがそれらは皆、ディスプレイや音声、あるいは文字の情報だったりする。ある世代から下の日本人は、ほとんど皆そうだろう。空襲の話も、原爆の話も、沖縄戦の話も、TVや映画などで多少は聞いた。もちろんそこに、傷ついた人が生きていて、今も傷ついたままだ、ということは分かる。が、本当にリアリティーを共有できるわけではない。戦争を語る人の側にも、いくら伝えようと努めても埋まらない溝、あるいは伝わらない思い、という限界ラインがきっと厳然としてあるのだろう。近づく努力はできても、同じにはなれないという、原理原則がそこには転がっている。

 いや別に、この作品のマンガとしてのリアリティーの問題に、無理やりつなげようと思っているわけでもない。ただ、ハハハと笑ってしまう自分は自分でありながら、それをもう少し覚めた目で見てしまう自分も居る、というだけのことなのだが。
 自分が、戦場のリアリティーを知ることなく生きてこれた世代だということは、たぶん世界史上とてつもなくラッキーなことだと思う。宝くじがすでに当たっている人生みたいなものだ。そして世の中には、このマンガを単純に笑える人も居れば、全く笑えない体験をしてきた(している)人も居るだろう。ギャグって本質的に、そういうどうしようもないズレのある場所で成立しがちなところがある。

 そういえば、ギャグの天才・赤塚不二夫は、幼少時満州から命からがら引き揚げる途中で、おびただしい数の死体が転がる風景を体験したらしい。きっと彼は、深い深いトラウマを抱えて生きた(失礼今も生きている、植物状態で…)のであろう。あまりに深いトラウマ記憶は、たとえ時が経っても、語ったり消化したりできないこともある。
 この世の地獄に触れたこともない僕が、赤塚のことを”分かる”などとは言えない。決して言えないが、赤塚のあの、どこまでも狂乱に向かっていく破壊的ギャグは、彼の幼少時の体験と、無関係ではないような気がする。そういう意味で、間接的に、”なんとなく分かるような気がする”。

 本書の作者は、(これは批判ではないが)とても脳天気なミリタリー・オタクと思われる。詳しい人がいたらチェックしてみて欲しいが、たぶん制服だの兵器だのの細部は、非常に正確にこだわりを持って描かれているような気がする。紅一点のコンビニ店員は、絵に描いたような巨乳(絵に描いてるんだってば!)で、あっけらかんとした素直タイプなあたり、ズバリおたく好み。ああ、なんて御都合主義。でもそれでいいんだ、マンガなんだから。

              *  *  *

 さて、ここからはさらに蛇足。

 昔、奥浩哉の「GANZ」の書評を新聞に書いた時、あの殺し合いがゲームのようだからそう書いたら、とある読者から「殺し合いをゲームにたとえて語るなんて不謹慎」という内容の、(たぶんお叱りの)手紙をいただいたことがある。その時、なんとも言えない不可解&不愉快な気分になって、何らかの形で返事を書こうかどうか迷ったが、結局、無視することにしたのを覚えている。

 この読者が「GANZ」を読んでもいないのは責めないとしても、いい年して(たぶん僕より年上)この世界中のあちこちで現実に、罪もない人々が実際に虫けらにも劣る殺され方をしていることを、彼は意識すらしていなかったのではないか。その鈍感さが当時の僕にはやたらに不快だった。だがいずれにせよ、現実の方がゲーム以下の殺人を放置している。一体何が不謹慎なのか、たとえ3秒くらいでもいいから考えた方がいい。
 もちろん、こんなことを書いて垂れ流せている自分は、たしかに安全圏に今は居る。正義と偽善は、現代に生きている限りほとんど区別できないが、自分に偽善の要素がないなどと僕は思っていない。

 若い読者には、水木しげるの戦記モノもぜひ読んで欲しい。戦争を笑った後に、ずっしり重い感覚を味わうのも、また読書。(阿部幸弘)
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