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「帽子の下の煙」”出会う”ということの希有さと不思議さ(2007.12.06記)

旧ブログからの引越し(その1)です。長いよ。

「帽子の下の煙」
「帽子の下の煙」ウィスット・ポンニミット著

 タイ人のマンガ家、ウィスット・ポンニミット。すでに数冊の単行本が出ているし、目立たないけれど雑誌連載もあるので、昔より知っている人は増えただろう。ファンの方、居ますか?

 日本デビューはたしか3年前くらいだったと思う(「エブリィバディエブリィシング」)。子供が自由自在に描いたような素朴極まりない絵柄で、一見へたくそに見えるのだけれど、読んでみると人物がとても生き生きしていて、動きの表現などは極上に素晴らしい。また、水森亜土を下手にしたような(?)二頭身キャラが良く出てくるのだが、こいつらがホント、可愛いんだよねー。

↓続き
 この本は現時点での最新作のようだが、どうやら、タイで出ていた本の日本語訳、とのこと。中身は相変わらずのポンニミット節で、さわやかに、そして静かに感動できる。テーマは男女二人の出会いの物語だ。まあ単純に言えば恋愛モノなんだけれども、惚れたハレタの葛藤ではなく、”出会う”ということの希有さと不思議さを軸に据えている。「袖振り合うも多生の縁」などと古い言い回しを思い出すけれど、人の一生は長いようで短く、出会いは偶然のようである意味必然なのかもしれず――そんな気分にさせられるマンガだ。ああ、そう言えばタイも仏教国だったなあ。

 1ページを基本的に三段のコマでレイアウトしていて、まるでスクリーンのような横長の画面が続く。これはやはり、映画を意識しているのかも知れない。そう。ウィスットのマンガはどれも、映像的な感覚に溢れているものが多い。彼は、マンガを描くだけでなく、自分の絵でアニメも作るし、音楽も付けてしまう人なのだ。

       *           *           *

 そう言えば思い出す。僕はウィスット・ポンニミット御本人を、東京で二度ほどお見かけしたことがある。最初は、アジアのマンガ家を集めたシンポジウムのパネリストとして。二回目は、なんとテニスコーツとの共演者として。多才な人なんだろうが、テイストは一貫しているので、彼らしいとしか言いようがない素朴なオーラを放っていた。

 パネリストの時などは、韓国のマンガ家が真剣な主張を展開している脇で、ただただニコニコしているだけで何も発言しない変わった奴――と思っていたら、いつの間にか会場のお客さんの様子を、彼の作風でこっそりスケッチしており、その絵を皆に見せて場を湧かせていた。皆多少呆れつつも、その絵の表情の可愛らしさに、すっかり雰囲気がなごんでしまったのを思い出す。そんな風に彼は、拍子抜けするような人の良さを持っている人物と思われる。

 テニスコーツとの競演では、彼もギターか何かを弾き、ステージの背景には自作のアニメーションが大写しされていた。これもマンガと同じ素朴な絵柄で、おそらくパソコンを使って個人で制作したと思われる簡素なアニメだったが、やはり味わいは変わらなかった。もちろんテニスコーツの演奏とも相性はばっちりで、これもなかなかに良い体験だった。

       *           *           *

 世間に転がる、いわゆる”心温まる”作品は、わざとらしくて大抵好きになれないのだが、ウィスット・ポンニミットの場合は、なぜかすんなり引っかかり無く入ってくる。それは、彼の底なしの素直さが根底にあるからなんだろう。

 そこで思うのは、近頃の日本マンガの絵柄だ。マンガの教材や学校など、たくさんの情報に簡単にアクセスしやすくなったからなのか、それとも業界全体の要求水準が上がったからなのか、理由はいろいろだろうが、新人であってもすでに技術的には完成している作品が増えた。もちろん技術レベルが高いことを悪いとは言えない。だが、何かが足りないと感ずることもまた、非常~に増えた。たとえてみれば、立派な皿に最高の盛り付けなのにもかかわらず、食べてみると滋養に欠けて、結局なんだか物足りない料理のごとく、線の持つ大胆さとか、息づかいとか、実験的意欲とか――様々な要素があるので一言ではいえないが――そういう、生の魅力に欠ける線が増えてしまった気がするのは、僕だけなんだろうか。

 マンガの絵の上手い下手は、絵画のそれとは異なる(もちろん、要素的には重なるところもあるだろうが)。本当にマンガとして魅力のある絵を育てるような方法論が、あるのかないのかは分からないが、少なくとも今のやり方の中には含まれていないと言うべきなのだろう。

 少年の魂がそのまま絵になったようなウィスット・ポンニミットの世界。未体験の方はお試しあれ。



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